スタジオポノック最新作の「屋根裏のラジャー」は、
泣ける深いストーリーと称賛の声が多い一方で、
わかりにくい部分が多いという意見もあります。
この記事では、
黒い女の子の正体やイマジナリーフレンドなど、
やや理解が難しい部分について、
ネット上の考察を参考にまとめていきたいと思います。
ネタバレを含みますので本編ご鑑賞後に本記事をご覧ください。
屋根裏のラジャー考察9つ!
1つ目:黒い女の子の正体
バンティングと行動を共にしている黒い女の子。
白い肌で目がくぼみ幽霊のような不気味な容姿で、
黒い服と黒髪が印象的な女の子です。
図書館にいるイマジナリの話によると、
彼女はバンティングのイマジナリーフレンド
であることがわかります。
もとはきれいな顔で明るく笑顔な女の子でした。
バンティングの影響で暗くなった

https://twitter.com/megamarsun/status/1735696426510999961/photo/1
彼女が暗く不気味な女の子に理由はバンティングでした。
バンティングはイマジナリを食べて、
何百年も生き続けている男です。
イマジナリ(黒い女の子)と、
ずっと一緒にいたいと考えた少年バンティングは、
大人になっても想像する力が欲しいと考えました。
そしてある時、他の子のイマジナリを食べてしまったのです。
それがきっかけとなり、
イマジナリを食べては想像力と取り込み、
長い間生きながらえてきたのです。

https://natalie.mu/eiga/pp/imax-rudger
そんなバンティングに対して悲しい気持ちになった女の子は、
しだいに暗くなったようです。
自分と一緒にいるために闇落ちしたことについて、
罪悪感もあったのでしょう。
バンティングは何百年も生きているとされています。
女の子も悲しみや罪悪感も
その長い年月で深く大きなものになり、
幽霊のような不気味な女の子になってしまったのでしょう。
バンディングに食べられて消えてしまった

https://twitter.com/FJaY1nBHVwK07pR/status/1735912489232302111/photo/2
黒い女の子は、
バンティングに自ら食べられるという
衝撃的な結末で終わります。
悲しい表情を浮かべながら食べられる姿が
とても切なかったですね。
女の子を飲み込んでしまったバンティングは、
消失してしまいました。
なぜ黒い女の子は自らバンディングに飲み込まれて、
そして彼と一緒に消えてしまったのでしょうか。
2つ目:黒い女の子が自ら食べられた理由

https://twitter.com/RZu0UFev6qaF3Jd/status/1735665322064040019/photo/1
ラジャーとアマンダの友情を目の当たりにした女の子。
かつて自分とバンティングも、
ラジャーとアマンダのような関係であり、
それを思い出したのではないでしょうか。
そして闇落ちしてしまったバンティングに対し、
哀れみや悲しみがつのり、
彼を止められるのは自分しかいない
と思って自分を犠牲にして、
バンティングを消滅させたのではないでしょうか。
最後の彼女の悲しい表情の理由は、
そんな複雑な心境だったからでしょう。
3つ目:イマジナリーフレンドとは

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1b27881951da37032404794e30750c6784035629
本作にはラジャーをはじめ、
イマジナリーフレンドがたくさん登場します。
本作におけるイマジナリーフレンドは、
ただ子どもの空想から生まれた、
ファンタジー的なものではありませんでした。
物語が進むにつれて、
子どもの悲しみや恐怖から
生み出された存在であることがわかってきます。
- ラジャー:父の死を乗り越えるために作られた
- エミリ:病気の女の子の代わりに飛び回るために作られた
- ジンザン:暗闇に怯える子が夜に安心して眠れるために作られた
そんな彼らの真の目的は、
子どもの悲しみや恐怖を取り除くのではなく、
それらを受け入れる手助けをすることではないでしょうか。
ラストでラジャーはアマンダに、

喜びも悲しみも繰り返して大人になる。
どんな時も僕はアマンダの中にいる。
と言います。
子どもたちは成長する過程で、
喜びだけでなく悲しみを経験するでしょう。
イマジナリーフレンドは、
悲しみをすべて取り除くことはできません。
だから悲しみを受け入れる手助けをすることが
イマジナリの本当の役割なのではないでしょうか。
アマンダもラジャーもそれを悟ったから、
最後は笑顔で別れを受け入れたのでしょう。
4つ目:バンティングがラジャーを狙った理由

https://natalie.mu/eiga/pp/imax-rudger
バンディングは他の子のイマジナリを、
捕食しながら生き延びているのですが、
特にラジャーに執着しどこまでも追いかけてきました。
エミリやジンザンなど他のイマジナリよりも、
どうしてラジャーだけを狙ったのでしょうか。
その理由は悲しみから生まれたイマジナリだったからです。
バンティングはラジャーに対して、

強い悲しみのスパイスが効いている
と言っています。
ラジャーは父を亡くし大きな悲しみを抱えていたアマンダが
その悲しみを乗り越えるために作り出したイマジナリです。
バンティングにとって、
その悲しみのスパイスはとても魅力的なものだったようです。
「バンティングが狙う=大きな悲しみから生まれたイマジナリ」
ということなのですね。
父を失ったアマンダの悲しみは、
いかに大きいものだったのかがわかりますね。
5つ目:傘に書かれた言葉の意味

https://www.fashion-press.net/news/81545
アマンダが屋根裏のクローゼットにしまっていた傘。
これはパパに買ってもらった大事な傘でした。
そしてその傘にはある言葉が書いてありました。
パパを忘れないこと、ママを守ること、ぜったいに泣かないこと
父を亡くした後にアマンダが書いた言葉でした。
この言葉こそラジャーを生み出したものだったのです。
アマンダとラジャーの誓いの言葉である、
消えないこと、アマンダを守ること、絶対に泣かないこと
と対になるわけですね。
ラジャーの黄色い髪の色は、
この黄色い傘の色ということなのでしょう。
6つ目:母が涙した理由

https://www.ponoc.jp/Rudger/character/
アマンダが交通事故に遭った後、
母リジーはアマンダの傘に書かれている、
パパを忘れないこと、ママを守ること、ぜったいに泣かないこと
という言葉を見つけて涙するシーンがあります。
アマンダの優しさを知った

https://natalie.mu/eiga/pp/imax-rudger
アマンダの父が亡くなった理由は語られていませんが、
彼の死によりリジーは新しい仕事と子育ての両立で手一杯の状態でした。
現実に押しつぶされそうになるなか、
娘のアマンダは何度言っても濡れた傘をクローゼットに入れてしまうし、
空想の友だちを遊んでばかり。
態度に出さないようにはしていましたが、
そんなアマンダを理解できなかったのでしょう。
しかし実はアマンダは母リジーに必死で寄り添い、
守ろうとしていたのです。
傘の言葉を見てそんなアマンダの気持ちを知ったリジーは
思わず泣いてしまったのでしょう。
7つ目:ラジャーが涙を流すことができた理由

https://twitter.com/frontrowjp/status/1735479960599675323/photo/1
本作におけるイマジナリは、
創造者が想像した制限のもと生きています。
例えば猫の姿をしたイマジナリ・ギンザンは、
闇が怖い子どもが「夜ずっと起きていて見守っていてほしい」
という思いからギンザンを作り出したため、
ギンザンは眠らない体になっています。
アマンダはラジャーに「泣かないこと」というルールを作っているため、
ラジャーは涙を流すことができません。
ところがラストでラジャーは大粒の涙を流しました。
おそらくこれは、
ラジャーはマジナリとは違う存在になったから
ではないでしょうか。
アマンダはラジャーとの別れを決意しますが、
ラジャーは

どんな時も僕はアマンダの中にいる。
とアマンダに言います。
イマジナリは子どもの成長と共に忘れ去られる存在ですが、
ラジャーはそれ以上の大きな存在になったのはないでしょうか。
8つ目:イマジナリが自由ではない理由

https://natalie.mu/eiga/pp/imax-rudger
アマンダの作った想像の世界で大冒険するラジャー。
なんでもありの想像の世界はとても自由なものに感じられました。
ところが実際のイマジナリの生活は
意外と自由ではありませんでした。
- 1日限定のイマジナリーフレンドとして働く必要がある
- 現実世界では扉を自分で開けられない
- 想像の世界の中で命を落とすと実際に死んでしまう
- 創造者のルールによる制限がある
イマジナリにはこのような制限があるのです。
自由な世界のはずが、
皮肉なことに意外と「現実的」です。
これはどうしてなのでしょうか。
想像の世界には限界がある

https://www.ponoc.jp/Rudger/character/
アマンダは父の死を乗り越えるために、
ラジャーを作り出し想像の世界に逃げ込もうとしました。
しかしずっと想像の世界にいても、
本当の意味での問題解決にはなりません。
想像の世界には限界があるのです。
そのため、
想像の世界を「ただ自由な世界」ではなく、
「制限のある世界」として描いたのではないでしょうか。
「想像の世界=制限がある」と描くことで、
反対に「現実世界=可能性に満ちた世界」
ということを伝えたかったのかもしれません。
9つ目:優しい色合いの意味

https://natalie.mu/eiga/pp/imax-rudger
本作を手掛けるのは、
元スタジオジブリのスタッフが立ち上げた「スタジオポノック」。
ジブリを継承した素晴らしいファンタジーの世界が広がるのですが、
非常に優しい色合いの映像に仕上がっています。
これは子どもに寄り添う優しがが表現されているだと思います。
そして大人にとっては、
子ども時代のキラキラしたイメージを
思い出させてくれる映像でした。
脱ジブリのためだった?

https://twitter.com/TOHOanimeSTORE/status/1734755265860231595/photo/1
本作はジブリっぽさが漂う部分もありますが、
脱ジブリを意識した雰囲気も感じられます。
それがこの優しい色合いの映像です。
最近のジブリ作品は、
優しいファンタジー映像だけでなく、
暗く重いダークな映像が多い傾向にあります。
本作はそのようなダークさをおさえ、
優しい映像をメインにしているため、
最近のジブリとは違った雰囲気が感じられました。





まとめ
今回は「屋根裏のラジャー」の考察をまとめてきました。
子どもが楽しめるファンタジー作品ではありますが、
意外と深い部分が多い作品である本作。
色々な考察を参考にしてみると、
また違った楽しみ方ができそうですね。