スタジオポノック最新作の「屋根裏のラジャー」は、
イマジナリの世界が泣けると高評価を得ています。
しかし、
- エミリの死
- 黒い女の子の目的がわかりにくい
- ラジャーとアマンダとの別れ
このような結末に後味の悪さを感じた方もいたようです。
この記事はこのような結末について、
深掘りしていきたいと思います。
ネタバレを含みますので、本編ご鑑賞後に本記事をご覧ください。
【ネタバレ】屋根裏のラジャー結末!
【結末1】エミリはどうなったのか
主要キャラであるエミリですが、
意外とあっさり死んでしまったことに、
違和感を覚えた方は多いでしょう。
どのような流れで結末を迎えたのか見ていきたいと思います。
イマジナリの世界のリーダー格
イマジナリの世界に住むイマジナリたちは、
人間の子どもの写真を選び、
その写真をチケット代わりに現実世界へ行き、
子どもの遊び相手をするのが仕事。
その世界のリーダー格がエミリです。
ラジャーはアマンダを探すために、
彼女の友達ジョンの写真を手に取り、
エミリたちと共に現実世界へ行きます。
しかしラジャーは途中で写真を手放したため、
イマジナリの世界に戻れなくなってしまいます。
そこに現れたのがラジャーを追うバンティング。
ラジャーとエミリたちはイマジナリの世界への扉を探します。
そしてやっと扉が見つかるのですが、
逃げようとした瞬間、
エミリはバンティングに撃たれてしまい死んでしまいました。
バンティングの想像の銃弾で殺された
バンティングがエミリを撃った銃は本物ではなく彼が想像したものです。
人間が作り出した空想上の友達であるイマジナリ。
彼らはファンタジーの世界に生きる自由な存在ではありません。
人間の想像によって制限された存在なのです。
例えばアマンダが「泣かないこと」というルールで作ったラジャーは、
涙を流すことができません。
バンティングが銃で撃つことを想像しただけで、
簡単にエミリは消されてしまったのです。
エミリの死によって、
イマジナリたちがいかに儚い存在なのかが伝わってきました。
イマジナリの悲しい運命を描くために、
エミリの死の描写は重要だったのかもしれませんね。
【結末2】黒い女の子の目的
本作のキャラクターの中で
異質の不気味さを放っていた黒い女の子。
彼女の正体はバンティングのイマジナリです。
最後はバンティングに食べられるという
衝撃的な結末を迎えました。
その目的は何だったのか見ていきましょう。
もともとは明るい女の子だった
図書館のイマジナリの話によると、
少年バンティングのイマジナリだった女の子は、
もとは明るい女の子だったそうです。
ところがバンティングが暴走したことで、
暗い女の子になってしまったようです。
バンティングは彼女とずっと一緒にいるために、
大人になっても想像力を得たいと考え、
あるとき他の子のイマジナリを食べてしまいました。
これがきっかけとなり、
行く先々で他の子のイマジナリを食べては、
何百年も生きながらえるという生活を送っていたのです。
そんなバンティングの姿を隣で見てみた女の子は、
- 他の子を食べるバンティングに対する悲しみ
- バンティングの闇落ちに対する罪悪感
このようなネガティブな感情から
暗く不気味な容姿になっていったようです。
バンティングに食べられる
アマンダの病室でのクライマックスシーン。
バンティングは大きな口を開けて、
ラジャーを食べようとしていました。
しかしそこにママのイマジナリの“れいぞうこ”がやってきて、
ラジャーを救い出すことに成功します。
口を大きく開けたままのバンティング。
突然黒い女の子はバンティングの口の下にやってきて、
みずからバンティングの口の中へ。
悲しい表情を浮かべながら食べられてしまいます。
バンティングは「現実の味がする」と言い消失してしまい、
彼の写真が床に落ちるのでした。
目的は何だったのか
黒い女の子は自分が食べられることで、
バンティングを消滅させました。
おそらく黒い女の子は、
ラジャーとアマンダと出会い、
二人の絆の深さを知ることで、
かつてのバンティングと関係を思い出したのではないでしょうか。
そのため、
他の子のイマジナリを食べて生き延びている彼に対して、
- 悲しみ
- 罪悪感
- 哀れみ
などの気持ちが膨らんだのだと思います。
だから彼の暴走を終わらせるために、
自らが犠牲になったのだと思います。
闇落ちしたバンティングのそばで生き延びる
自分自身を解放するためにも、
死を選んだのかもしれません。
【結末3】ラジャーとアマンダの別れの意味
アマンダの空想上の友達イマジナリであるラジャー。
ラジャーが生まれたのは3か月と3週間と3日前。
これはアマンダの父親の命日でした。
アマンダは父親が亡くなり悲しみを乗り越えるために
ラジャーを作り出していたのです。
つまり悲しみを乗り越えることができれば、
ラジャーは役目を終えて消えてしまいます。
そのことを知ったラジャーは、
消えることを覚悟のうえアマンダの病室に向かいます。
そして無事にアマンダと再会を果たし、
バンティングの危機も去った後、
ラジャーはアマンダに言います。
喜びも悲しみも繰り返して大人になる。
どんな時も僕はアマンダの中にいる。
これから大人になっていくアマンダは、
たくさんの喜びを経験するでしょう。
しかし同時にたくさんの悲しみも経験します。
今回父の死の悲しみを乗り越えられた後にも、
きっと他の悲しみはやってくるはずです。
イマジナリのラジャーであっても、
その悲しみをすべて消し去ることはできません。
だからそれを受け入れる手助けをすることが、
ラジャーの役目なのだと思います。
そしてその役目は、
ラジャーの姿が見えなくなった後もきっと続くのでしょう。
ラストの涙の意味
イマジナリであるラジャーは、
創造者のアマンダが想像した制限のもと生きています。
アマンダはラジャーに「泣かないこと」というルールを作っており、
ラジャーは涙を流すことができません。
ところがラストでラジャーは大粒の涙を流しています。
これはラジャーが、
アマンダのイマジナリという存在以上になったことを
意味しているのではないでしょうか。
アマンダと同じように涙を流すことができたラジャーは、
彼女の一部になったのかもしれませんね。
まとめ
今回は「屋根裏のラジャー」の後味が悪いとされる
- エミリの死
- 黒い女の子の目的がわかりにくい
- ラジャーとアマンダとの別れ
について考察してきました。
エミリの死にはイマジナリの儚さが描かれており、
黒い女の子の死にも深い理由がありました。
さらにラジャーとアマンダの別れも、
決して悲しいものではなく
アマンダの成長が感じられる清々しいものでした。
このように解釈すると、
後味の良い終わり方に感じるかもしれませんね。