浦沢直樹による「PLUTO」の元ネタは、
鉄腕アトムの「地上最大のロボット」です。
今回の記事では、
原作の内容や「PLUTO」との違いについてまとめたいと思います。
PLUTOプルートゥの元ネタは?
鉄腕アトム「地上最大のロボット」
PLUTOの原作は、
漫画誌「少年」にて昭和39年6月号~昭和40年1月号に連載された、
鉄腕アトムの第55話「史上最大のロボットの巻」です。
同じく漫画誌「少年」で連載していた「鉄人28号」に対抗するために、
ロボットバトル系のエピソードが作られました。
・人間のエゴで作られた戦闘ロボットのプルートゥ
・心優しいロボットのアトム
・世界各地にいる最強で個性的なロボットたち
これらのロボット達によるバトルは非常に完成度が高く、
鉄腕アトムの中でも人気の高いエピソードとして
ファンに愛されてきました。
この話が連載されていた時について、
作者の手塚治虫さんが、
描いていて一番楽しかった時期
と語っていたことは有名です。
テレビアニメ版でも3度放送されています。
プルートゥとアトムの物語
アラブ某国のサルタンは、
お抱え科学者のアブーラ博士に、
最強ロボット・プルートゥを作らせます。
そしてプルートゥが世界最強だと証明するために、
アトムを含む各国の最高ロボット7体の破壊を命じます。
戦うためだけに作られたプルートゥは、
命令に従い次々にロボットたちを破壊します。
そしてついに最後の1体となったアトムとの対決。
しかし突然阿蘇山の噴火が起きます。
噴火を食い止めるために、
大きな岩と積み上げるアトム。
プルートゥにも手伝うように言いますが、
自分は戦闘用に作られたロボット。
それ以外のことにエネルギーは使いたくない。
と拒否。
しかしアトムの健気な姿を見るうちに
プルートゥの中で何かが変化し、
アトムを手伝い一緒に噴火を食い止めます。
アトムと心を通わせたプルートゥは、
アトムと戦うことを拒否するのでした。
しかしそこに
ゴジ博士が作った最強ロボットボラーが出現。
プルートゥはボラーを倒し自らも命を落とします。
明かされる真実
実はボラーを作ったゴジ博士と
お抱え科学者アブーラ博士は同一人物。
アブーラ博士はサルタンから命じられ、
百万馬力のプルートゥを作りました。
しかしサルタンはプルートゥで他のロボットを倒し始めてしまいました。
そこでアブーラ博士はプルートゥを倒すために、
ゴジ博士として二百万馬力のボラーを作ったのです。
アブーラ博士は、
世界一のロボットは力ではありません。
アトムのように、たとえ十万馬力でも、
正しい心を持つロボットのことを言うのです。
とサルタンに言うのでした。
考えさせられる物語
「地上最大のロボット」は「PLUTO」のような複雑さはありません。
しかし「善(アトム)VS 悪(プルートゥ)」という
単純な物語でもありません。
ロボット達の戦いを通して、
善悪や本当の強さなど、
様々なことを考えさせられる物語でした。
最後にアトムはお茶の水博士に言います。
博士、どうしてみんな戦うのでしょう
力の強いものは、その強さを使ってどうしても威張りたくなる
しかし結局はその強さで、自分自身も滅んでいくんじゃよ
これは深い言葉ですね。
連載当時の1960年代には
斬新な物語だったのでしょう。
鉄腕アトムがなぜあれほど人々を熱狂させたのか、
改めてよくわかるエピソードでした。
PLUTOプルートゥの元ネタとの違いや表現は?
主人公
原作「地上最大のロボット」の主人公はアトムです。
鉄腕アトムシリーズの中のエピソードなので当然ですよね。
一方「PLUTO」の主人公は、
世界最高水準のロボットであるゲジヒトです。
原作では7体のロボットのうちの1体という扱いでしたが、
「PLUTO」では彼を中心に物語が展開します。
中盤で命を落とした後は、
アトムが主人公として描かれますが、
最終的にはゲジヒトの「憎しみからは何も生まれない」
という想いを引き継いだアトムが世界を救うので、
やはり主人公はゲジヒトだったと言えるでしょう。
世界最高水準ロボット7体のデザイン
原作も「PLUTO」も見どころは、
個性的なロボットたちが登場するところです。
世界最高水準ロボットとされる7体のロボット。
名前は原作も「PLUTO」と同じですが、
デザインやキャラクター設定が少し違っています。
ゲジヒト
【PLUTO】
第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加。
ドイツで活動するユーロポール特別捜査官ロボット。本作の主人公。
【地上最大のロボット】
ドイツ一のロボット刑事。
アトム
【PLUTO】
第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加し、アイドルのように扱われた少年ロボット。
現在は日本で家族と一緒に暮らし、小学校に通っています。
【地上最大のロボット】
10万馬力の少年ロボット。本作の主人公です。
モンブラン
【PLUTO】
第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加。
戦後はスイスの森林保護担当官ロボットとして活動。山岳ガイドや遭難者救助も行っています。
【地上最大のロボット】
スイスの山案内ロボット。
ノース2号
【PLUTO】
ブリテン軍の総司令官アンドリュー・ダグラス将軍のもと第39次中央アジア紛争に参加。
現在は音楽家ポール・ダンカンの執事ロボット。
【地上最大のロボット】
スコットランド北部の古城で自分を作った博士に仕えるロボット。
ブランド
【PLUTO】
第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加。
現在は格闘技ロボットとして人気を集めています。
【地上最大のロボット】
トルコのロボット力士。
ヘラクレス
【PLUTO】
平和維持軍として第39次中央アジア紛争に参加。
現在はブランド同様格闘家ロボットであり世界王者。
【地上最大のロボット】
世界最強と自認するギリシアの戦士ロボット。
エプシロン
【PLUTO】
第39次中央アジア紛争への参加を拒否。平和主義を貫く優しいロボット。
【地上最大のロボット】
オーストラリアの孤児院で働く心優しいロボット。
このように7体とも大幅にデザインが変更されていますね。
当初は原作のデザインをそのまま使うつもりだったのですが、
PLUTOを監修した手塚治虫の息子である手塚眞さんが提案し、
オリジナルのデザインになったそうです。
プルートゥの設定
原作のプルートゥは、
サルタンの命令によりアブーラ博士が作った最強ロボットです。
戦うためだけに作られたロボットなので、
命令に従い冷酷に他のロボットを破壊していきます。
一方「PLUTO」のプルートゥの設定はもっと複雑です。
もともとは兵士ロボットではなく、
緑化計画のために作られたロボットでした。
しかし戦争が勃発したことで、
アブラー博士が兵士ロボットに作り変えます。
そして青年ロボットサハドの人工知能が入れられ、
最強ロボット・プルートゥが誕生したのです。
また原作ではプルートゥははじめから登場しましたが、
「PRUTO」では徐々に正体が明かされていきました。
このミステリー要素も違う点でしたね。
原作にはないオリジナルキャラクター
「PLUTO」では、
原作にはない物語が複数展開するため、
オリジナルの登場人物もいます。
・サハド(アドラー博士の息子ロボット)
・ブラウ1589(殺人を犯したロボット)
・Dr.ルーズベルト(トラキア合衆国を裏で操る人工知能)
・ワリシー(エプシロンに引き取られたペルシア人少年)
・アドルフ・ハース(反ロボット主義者)
これらは「PLUTO」の重要なキャラクターですが、
原作には存在しません。
原作よりも大幅に物語が複雑化したことがわかりますね。
人間も殺される
原作で殺される(破壊される)のはロボットたちだけでした。
しかし「PRUTO」では人間も殺されます。
世界最高の7体のロボットが殺される事件と並行して、
ボラー調査団の人間達が次々に殺されます。
この点からも、
「PRUTO」が原作より複雑化し、
ミステリー作品になったことがわかりますね。
まとめ
今回は、
浦沢直樹による「PLUTO」の元ネタについてまとめました。
鉄腕アトムの「地上最大のロボット」が原作ですが、
物語や登場人物など様々な要素が変わっています。
原作を知ってから「PLUTO」見ると、
さらに面白さが倍増するでしょう。