「エブエブ」はADHDという病気について描いていると言われています。
今回はADHDが裏設定と言われる理由について
調べてみたいと思います。
ネタバレを含みますので、本編ご鑑賞後に記事をご覧ください。
エブエブはADHDと言われる理由は?
エヴリンのキャラはAHDHを描いている
「エブエブ」がADHDと言われる理由は、
主人公エヴリンがADHDという裏設定があるからです。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは発達障害の一種。
年齢に見合わない「不注意さ」、
好きなこと以外に対する集中力がなく興味をあまり示さない「多動性」、
思いついたことをよく考えずにすぐに行動に移してしまう「衝動性」
のような特徴が見られます。
周りの人と比べてミスなどが目立ちやすくなり、
仕事や家庭での生活に支障をきたすこともあります。
エヴリンのADHDについては、
劇中ではっきり語られているわけではありません。
しかし以下のようなエヴリンの姿から、
ADHDであることが伺えます。
様々なタスクに対応できない
ADHDの人は、
複数の物事へ注意を分配するのが難しいために、
様々なタスクに対応できないケースが多いといいます。
エヴリンの周りでは、
クリーニングと家族の問題が同時に起きており、
エヴリンは上手く対処できずにいます。
・ランドリーの客の対応
・ランドリーの経営難
・頼りにならない夫
・同性愛者の娘
・父親の介護
・春節のパーティの準備
このようにたくさんの問題を抱えているエヴリン。
普通の人でも対処できないほどのタスクに、
押しつぶされそうになっているのです。
ADHDを抱えながら生きることの大変さが、
さりげなく描かれていたと思います。
別のことを考えてしまう
ADHDの人は、
好きなこと以外に対して集中するのが苦手だとされています。
家族と一緒に国税局にやってきたエヴリンは、
国税庁税務官ディアドラの説明を聞きますが、
気持ちが別のことに向いてしまい、
難解なディアドラの説明が頭に入りません。
これは序盤のディアドラのシーンでも、
ラストのディアドラのシーンでもありました。
様々なマルチバースを経験し、
家族との問題も解決したエヴリンでしたが、
ADHDはそのままということがわかる描写でしたね。
何事も最後までやり遂げられない
国税庁税務官ディアドラに、
ランドリーにあるカラオケ機器の経費に指摘されたエヴリン。
その他にも、
シェフや教師など、
様々な職業に関する経費について、
ディアドラに突っ込まれていました。
エヴリンは様々なことに挑戦しては、
上手くいかなかったことがわかります。
また、父親のゴンゴンが娘エヴリンのことを、
いつも投げ出して、最後までやり遂げたことがない
と言うシーンもあります。
子供の頃から、
何事も最後までやり遂げられずにいたエヴリン。
これもADHDを意識した描写と言えるでしょう。
ウェイモンドのセリフ
エヴリンの夫ウェイモンドは、
混乱するエヴリンに対して、
「深呼吸」をするように促すシーンが
何度か出てきました。
これはADHDの人への呼びかけの言葉でもあるそうです。
劇中ではエヴリンがADHDである様子が描かれていますが、
エヴリン本人は自分の病気について気付いていません。
しかしウェイモンドは、
エヴリンが何か問題を抱えていることに
気付いているのかもしれませんね。
情報量の多さはADHDの視点だから
本作がADHDだと言われる理由は
ADHDの視点で描かれているからとも言えるでしょう。
本作のテーマはマルチバースです。
今いる自分とは違う人生を選択した自分が生きる宇宙(マルチバース)が、
無数に存在します。
エヴリンはバースジャンプを繰り返しながら、
それぞれの宇宙の自分とリンクするのですが、
とにかく情報量が多くカオス状態です。
情報を処理するのが大変
非常に目まぐるしくシーンが変わるので、
その情報を処理するのが大変。
目はチカチカして、
耳がガンガンして、
疲れてしまう方もいるでしょう。
映画の中盤で、
音も動きもない岩のシーンが出てきます。
これは監督が観客に休憩を与えるために
入れたシーンだったそうです。
それほど本作は、
忙しく疲れる映画なのです。
エブリンの視点=ADHDの視点
本作は情報量が多すぎて疲れる理由は、
エヴリンの視点=ADHDの視点で描かれているから
と言えると思います。
ADHAの病気と闘うことの難しさが、
さりげなく描かれているのが本作の特徴です。
「エブエブ」はADHDの映画と言われるのは、
このような理由があるでしょう。
ADHDがエヴリンというヒーローを作り上げた
本作がADHDの映画だと言われる理由は、
エブリンがADHDだから
という単純な理由だけではありません。
ADHDがエブリンというヒーローを作り上げた
ということが描かれているからでしょう。
エヴリンはADHDであるために、
・思いついたことをよく考えずに行動に移してしまう
・上手くいかずにやり遂げられない
このような問題を抱えています。
しかしこれにより、
あらゆる宇宙が作られ、
そのあらゆる宇宙と繋がることができたのです。
「集中力がない」「やり遂げられない」というADHDの苦悩は、
本作においてはプラスに働き、
エヴリンというヒーローを作ったと考えられるでしょう。
エブエブ監督もADHDの病気だった
映画制作中に監督がADHDだと判明
本作の監督は、
ダニエル・クワン(左)
ダニエル・シャイナート(右)
こちらのお二人です。
このうちダニエル・クワン監督は、
映画制作中にADHDだと判明したそうです。
監督の母親もADHDだった
実はクワン監督の母親には、
ADHDの症状があったそうです。
主人公のエヴリンはクワン監督の母親がモデルだといいます。
クワン監督が初めに考えた物語は、
エヴリンにはADHDがあり、
その症状によって別宇宙と繋がれる
という設定だったそうです。
そこでクワン監督は、
このADHDの病気について
きちんと描くために、
ADHDについてリサーチをしたといいます。
そして調べていくうちに、
自分自身にもADHDの要素があることに
気付かされたのです。
治療を受けた
その後クワン監督は1年間セラピーに通い、
ADHDと診断され、
治療を受けることになったそうです。
今も医療は続いているといいます。
クワン監督はADHDと診断されたことについて、
・自分の人生がどうしてこんなにハードだったのか理解することができた
・心が浄化されるような美しい体験だった
このように語っています。
映画は監督自身の体験
クワン監督は、
自分がこれまでの人生において、
色々なことをやりたいと思いながら、
何もできていないと感じながら過ごしてきた
と感じていたことを、
エヴリンに重ねたといいます。
監督自身の体験が、
本作のADHDというテーマに
しっかり反映されているのですね。
自分のADHDと向き合えたことで、
エヴリンというキャラクターを
新しい視点で見れるようになった
とも語っています。
まとめ
今回は「エブエブ」がADHDと言われる理由について、
様々な角度からお伝えしてきました。
本作をADHDという視点から観てみると、
その奥の深さを知ることができるでしょう。