ネットフリックスで話題の「ペイン・ハスラーズ」。
製薬会社の闇を描いた作品ですが、
実話に基づいた映画でもあります。
オピオイド系鎮痛剤「サブシス」の販売方法をめぐり、
違法な手段を使ったとして訴えられたインシス社。
このアメリカの製薬会社がモデルになっています。
映画のどの部分が実話なのか、
物語の流れと共にまとめました。
ペイン・ハスラーズは実話
主人公は複合キャラ
主人公のマザー・ライザは、
職を転々としているシングルマザー。
学歴も職歴もない彼女は、
ストリップクラブで働いていました。
ある時、客としてやってきた、
ザナ製薬の重役ピートと出会います。
ライザの大出世ストーリーはフィクション
イギリスの人気女優エミリー・ブラントが演じる
主人公ライザ・ドレイク。
彼女は実在の人物ではありません。
本作の登場人物は、
製薬業界の実在の人物をベースにし、
映画オリジナルの要素が加えられています。
しかし主人公ライザは特定のモデルはいません。
様々な個性を持つ複合キャラとされています。
なんの取り柄もないライザでしたが、
製薬会社の営業の仕事が大成功し、
膨大な富を得ることになります。
これが実話ならすごい人物ですが、
やはり彼女はフィクションなのですね。
製薬会社はインシス社がモデル
経済的に行き詰っていたライザは、
無理やりピートのコネを使い、
ザナ製薬に雇ってもらいます。
ライザに課せられた仕事は、
ザナ製薬が開発したがん鎮痛剤の新薬「ロナフェン」を
医者に売り込むこと。
製薬会社は、医者に処方箋を書かせて薬を販売することで、
利益を得ることができます。
ライザは処方箋を書いてくれる医師を探して奮闘し、
見事ライゼル医師から処方箋を書いてもらえることになります。
その勢いのままライザとピートは新人営業マンを教育し、
ロナフェンを売りまくります。
インシス社は実在する製薬会社
ライザが営業マンになる物語はフィクションですが、
ザナ製薬は、
アリゾナ州に本社を置く製薬会社インシスが
ベースになっています。
ガン鎮痛剤ロナフェンは「サブシス」がモデル
ライザが必死になって売ろうしている薬は、
ロナフェンという薬です。
・末期がんの鎮痛剤
・副作用が少ない
・依存性がない
このように、
がん患者の痛みを和らげてくれて、
かつ安全性の強い魔法のような薬とされていました。
実際に痛みによる苦痛から解放された人々の姿を見て、
会社の利益だけでなく、
人助けができていることにやりがいを感じていました。
ライザたち営業マンはロナフェンを売り続け、
ザナ製薬は莫大な利益を得るのでした。
実は危険な薬だった
やがて売り上げが横ばいになってくると、
ザナ製薬は末期がんの患者以外も
ロナフェンを処方するように
医師たちに圧力をかけはじめます。
頭痛などの痛みを訴える患者にも
ロナフェンを使い始めたのです。
これが恐ろしい結果を招くことになります。
ロナフェンはがん患者の痛みを劇的な効果をもたらす薬です。
しかし中毒性のあるフェタミンを使っているため、
中毒者が出る恐れがあるのです。
がん患者は中毒症状が出る前に亡くなるため、
臨床試験では中毒性は問題視されませんでした。
しかしがん患者以外に使い始めたため、
中毒者が急増する事態になってしまいました。
病院には薬を求める患者が溢れる異常事態となり、
ついに死者まで出てしまいます。
「サブシス」も中毒性が高く危険な薬
実在のインシス社が販売していた薬は、
オピオイド系鎮痛剤「サブシス」で、
がん患者向けの強力な薬です。
中毒性が高いことで問題視されており、
劇中のロナフェンはこの「サブシス」がモデルになっています。
オピオイド系鎮痛剤は依存性が低いということで、
1990年代に売り出されたのですが、
その後中毒者が急増。
米疾病対策センター(CDC)の報告によると、
全米ではこの20年間にオピオイド系鎮痛剤の過剰摂取による死亡数は約40万人。
2017年には4万7600人とされています。
劇中のロナフェン以上に
非常に恐ろしい薬と言えますね。
医師への買収も元ネタがあった
ロナフェンを売り膨大な利益を生み出すことに成功したザナ製薬は、
セミナープログラムという名の接待パーティーを開催。
医師に賄賂を渡して、
より多くの患者にロナフェンを服用させていきました。
薬を売るためなら何でもアリの製薬会社と、
それを受け入れる医師たち。
腐りきった業界の闇が描かれていました。
インシス社も違法な販売促進を行っていた
実在のインシス社は2012年~2015年頃に、
鎮痛剤サブシスの売り上げを上げるために、
違法な販売促進を行っています。
サブシスの処方を増やすことを条件に
賄賂を支払っていたことが明らかになりました。
支払われた賄賂の総額は、
なんとは1000万ドル(約11億円)以上と言われています。
この賄賂額も驚愕ですが、
サブシスの売り上げは、
2015年時点で3億2950万ドル(約360億円)。
恐ろしい世界ですね。
映画の中の話ではなく実話だと知ると、
本当に恐ろしくなります。
患者は医師が処方する薬は、
自分にとってベストなものだと信じて服用しています。
実はそうではなかったら…と考えるとゾッとしますね。
ラップシーンも元ネタあり
劇中でザナ製薬の重役ピートが、
スプレーボトルの着ぐるみを着て、
ステージでラップを披露するシーンがあります。
これにも元ネタがあり、
エンドロール前に実際の映像が流れました。
サブシスの販売促進には、
ラップ音楽を用いた販促ビデオなどが活用されていたそうです。
がん患者用の薬にラップ音楽とは驚きですね。
ピートはインシス社の元CEOマイケル・バビッチ
という人物がモデルになっているそうです。
ザナ製薬創業者はジョン・カプールがモデル
アンディ・ガルシア演じるジャック・ニール。
ザナ製薬に投資している博士で創業者です。
鎮痛剤ロナフェンの拡大により
大成功をおさめますが、
患者の命よりも会社の利益を重視するなど、
不可解な行動を取るようになってしまいます。
彼のやり方に疑問を持ち始めたライザは、
被害拡大を防ぐために、
ザナ製薬を告発するために動きます。
ライザの母ジャッキーとのメールが証拠となり、
ジャックは贈賄罪で逮捕。
数年の禁固刑が言い渡されています。
インシス社の創業者ジョン・カプールがモデル
ジャックのモデルとなっているのは、
インシス社の創業者ジョン・カプール。
劇中最後に実際の写真が出てきますが、
アンディ・ガルシア演じるジャックは、
彼に雰囲気を似せている感じがしますね。
インシス社は医師に賄賂を渡して、
依存性のあるオピオイド系鎮痛剤を処方させ、
この薬の乱用を招いた罪に問われ、
ジョン・カプールと幹部5人が有罪判決を受けました。
ジョン・カプールは禁錮5年6カ月が言い渡され、
警察側は製薬会社への警告になればとしています。
まとめ
今回は「ペイン・ハスラーズ」が
実話の部分をまとめてきました。
主人公はフィクションですが、
物語の軸となる部分は、
実在するインシス社で起きたこと。
この事実を知ってから本編を観ると非常に恐ろしいです。
アメリカの製薬会社の裏側を知ることができる
社会派ドラマですね。