世界中で2371万部が発行され、
今も多くの人に読まれ続けている「窓ぎわのトットちゃん」。
なぜこれほど爆売れしたのでしょうか。
時代背景やメディア戦略、
障害を明るく描写していることなど、
「窓ぎわのトットちゃん」が売れた理由についてまとめました。
窓際のトットちゃんはなぜ売れた?
黒柳徹子絶頂期に出版されたから
今でも人気者の黒柳徹子さんですが、
「窓ぎわのトットちゃん」が出版された1981年の頃は人気絶頂期でした。
- 徹子の部屋
- NHK紅白の司会
- ザ・ベストテン
女優として活躍しながら、
このような番組での司会者として人気を集めていました。
バリバリ司会進行をして頭が切れる一方で、
エキセントリックな面も見せる不思議ちゃんな黒柳さんは、
お茶の間の人気者でした。
そんな黒柳徹子さんが自伝ということで、
黒柳徹子の頭の中はどうなっているのか知りたい!
と、日本中が興味を持ったのでしょう。
自筆で執筆された本だから
芸能人やスポーツ選手などの著書は、
ゴーストライターがまとめることが多いといいます。
しかし本作品は100%黒柳徹子さんが書いたもの。
代筆されたタレント本とは一線を画したため、
大ヒットに繋がったのでしょう。
メディア戦略が功を奏したから
本作品が発売された1980年代はテレビ全盛期でした。
まだインターネットが登場していない時代だったため、
テレビなどメディアでの販売促進が何より効果的でした。
そんな時代の中で、
「窓ぎわのトットちゃん」はテレビで大々的に宣伝されました。
「徹子の部屋」
「ザ・ベストテン」
など黒柳さんの大人番組の中で、
発売後も本について言及されることが多かったため、
人々の興味を惹いたのです。
このメディア戦略があったから、
ベストセラーに繋がったと言われています。
落ちこぼれが抑圧された時代だったから
「窓ぎわのトットちゃん」が出版された頃は、
中学校・高校での校内暴力の増え荒れた時代でした。
受験戦争が激化するにつれて、
競争から落ちこぼれた生徒は教師に反発。
それに対して学校側も厳しい対処をするため、
さらに反発が大きくなるという悪循環に陥っていたのです。
そんな時代だったから、
この本の中で描かれた「落ちこぼれでも受け入れる教育」は、
多くの人に支持されました。
これもこの本が売れた要因のひとつと言えます。
障害者を明るく描写しているから
本作品が出版された1981年当時は、
障害者への理解が今とは違うものでした。
発達障害などのという言葉は知られておらず、
受け入れる体制も整っていませんでした。
障害者を平等に扱う教育や、
多様性を尊重する教育も行われていないどころか、
その概念さえなかった時代です。
そんな時代において
本作品で描かれた障害者の描写はとても新鮮なものでした。
小児まひの子どもも普通に木に登らせたり、
障害があっても輝ける運動会など、
障害者が明るく生き生きと描かれていました。
障害を持つ当事者や
障害を持つ子どもの親にとって、
こんな教育方法があるんだ
こんな学校が実際にあったんだ
という事実は、
大きな希望となったでしょう。
これも本作品が空前の大ヒットとなった
理由のひとつであることは間違いないでしょう。
疎外された人たちの共感を得たから
本作品が発行された当時、
不況の中で戦力外とされた社員が閑職に追いやられる、
「窓ぎわ族」という言葉が生まれていました。
黒柳さんはトモエ学園に入る前の学校で、
周りになじめない疎外感を抱いていたそうです。
その自分と「窓ぎわ族」を重ねて、
「窓ぎわのトットちゃん」というタイトルをつけたといいます。
その後さらに経済は悪化し、
リストラ、倒産などにより疎外を感じる人は増え続けています。
本作品のトットちゃんに共感し、
そして希望を見出す人が多いことも、
本作がこれほど長く愛されている理由と言えるでしょう。
いわさきちひろの絵が本のイメージと合っていたから
本作品の表紙や挿絵には、
絵本作家として有名ないわさきちひろさんの絵が使われています。
黒柳さんはいわさきさんの絵にこだわり、
1つ1つ黒柳さんが選んだそうです。
このいわさきさんの絵も、
この本の魅力のひとつとされています。
いわさきちひろさんの画風と、
本作品の児童文学的なイメージとピッタリだったことで、
本の魅力は倍増したのです。
また絵本作家いわさきちひろの絵は、
親世代に刺さったことも大きかったようです。
読みやすい本だから
黒柳さんは本作品を、
若い人にも読んでほしいという思いから、
絵本的なイメージの本にしたといいます。
- 1ページにつき43字17行という見やすさ
- 読みやすい字体
- わかりやすい文章
- テンポ良く読み進められる文章
このような工夫を凝らされた本だったから、
多くの人が読むことができて、
口コミなどでどんどん広まったと言われています。
教育教材として活用されているから
本作品が出版された当時は、
発達障害はセンセーショナルなものでした。
しかし時代が進むにつれて発達障害への知識が広まり、
子どもの保育や教育の場にも取り入れられるようになりました。
保育者、教育者にとって、
「窓ぎわのトットちゃん」は教科書のような本だといいます。
出版から40年以上経っても売れ続けている理由は、
教材として欠かせない本だからとも言えるでしょう。
小学校の推薦図書にもなっています。
タレントの自伝というジャンルではなく、
教育的な本として認知されているため、
これからも売り上げは伸び続けるでしょう。
まとめ
今回は「窓ぎわのトットちゃん」が売れた理由についてまとめました。
時代背景や障害者の描き方、
さらに何と言っても黒柳徹子さんの魅力など、
様々な要素が合わさったことで大ヒットに繋がったことがわかりました。
これからも売れ続けることは間違いないでしょう。